2024.11.30
▲講師 米山哲司(よねやまさとし)さん
りぶら市民活動センター・岡崎市地域交流センターでは、市民活動支援を目的とした広報講座を毎年開催しています。昨年度までは各センター個別に講座を開催していましたが、今年度より、広報に関する専門家を招き、全センター事業として開催する運びといたしました。
岡崎市で市民活動に携わる方は、岡崎市市民活動団体が約550団体、特定非営利活動法人が74団体 (令和元年11月現在)、任意団体や個人で活動されている方も多く、愛知県内の他市と比較しても市民活動が活発と言われています。
市民活動が活発に行われる中で、みなさんからよくいただく声(課 題)として、
「いい活動をしているのに何で伝わらないのだろう?」という声があります。
また、シニア世代の方からは「パソコンが苦手なのでSNSを使った発信ができない」という声
一方で、若い世代でも 「SNSを使って発信しているけれど効果がでない」
という広報に関するお悩みも。
これらの課題の根底に共通する“思い込み”として
〈 広報上手 〉=〈 センスのいい情報発信 〉があります。
ここで重要なのは、 〈 広報に必要なセンス 〉とは何か?
すなわち〈 広報の本質 〉を正しく掴んでいますか? ということです。
これらの課題意識を踏まえ、開催したのが市民活動を広げるための広報講座「伝わる情報って何だろう?~広報の本質 を学ぶ1Day講座」です。
本講座は定員40名のところ、沢山のご応募があり60名まで増席し、
当日は、市内外から55名の方にご参加いただきました。
講師の米山哲司さんは「広報」のプロフェッショナル。
NHKや企画会社などの経験を経て、現在は特定非営利活動法人Mブリッジの代表理事を務められながら、「PRプランナー」「キャリアコンサルタント(国家資格)」の資格を活かして企業やNPO活動者の支援を行っています。
米山さんの「広報・PR上手な人とは?」という投げかけからはじまった本講座。
みなさんなら、どのように答えますか?
・・・ 答えを明かすと、 広報・PR上手な人とは「つながりづくりが上手な人」です。
広報(PR)とは、Public(社会、公衆)Relation(つながり)のこと。
SNSを使った情報発信は苦手でも「つながりを作るのが得意 !」という方なら
もしかすると各団体にお1人はいらっしゃるかもしれませんね。
「いやいや…つながりを作るのは得意でも、情報が届きません!振り向いてもらえません」
なんていう声もありますね。
その理由についても、米山さんからお話がありました。
現代社会は、さまざまな資源が減っています。
〈人口〉〈資金〉〈時間〉〈関心〉etc…
これらが減っているということは、これらを求めるライバルが増えます。
また、現在は情報量がとても増えています。
消費者が1日受け取る広告メッセージは何と〈3000〉にも及ぶとか。
(イギリス・リーズ大学 デザイン学科講師 マイク・シーディ氏 調査研究)
膨大な広告量に加え、現代は〈誰もが発信者〉であり、〈多チャンネル〉です。
〈無料のメディア〉も沢山あります。
情報が溢れる社会の中で、情報を届けるということの難しさ
市民活動・ボランティア活動が「いいこと」「大事なこと」と頭でわかっていても、
行動にまで繋がらない理由は、
同業他社だけではないライバル(娯楽や欲望、SNS…etc)がいるからなんですね。
沢山のライバルがいることを理解した上で、
〈 選ばれる存在 〉になるにはどうしたらいいか?
その手法を考えるのが〈広報〉の役割です。
講座では、①届けたい内容(わたし)②届けたいひと(相手)③情報発信(手法・手段)の順に解説が進められ、グループワークを交えながら学びを深めました。
①届けたい内容(わたし) を考える上でのポイントとして…
・所属先は何をするところですか?(団体紹介文を考える)
・伝えたいことの本質を理解すること
②届けたいひと(相手) を考える上でのポイントとして…
・ターゲット
・ペルソナ
③情報発信(手法・手段) を考える上でのポイントとして…
・プッシュ型/プル型のメディア
・共感ゾーンに訴求するAIDMA(アイドマ)やAISAS(アイサス)
・役に立つ話題(切り口)
・ベネフィット(所属団体の活動から得られる未来は何か?)
などのお話がありました。
・・・
参加者から寄せられた声を一部、紹介いたします。
※ 点数評価は80点=期待通りの満足 という基準です
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〈 市民活動をはじめたばかりの方 〉
「もっと早くこのような講座があったら」【未記入】
「全てはじめて聞くことばかりでしたが大変勉強になりました」【80点】
〈 市民活動を実践されている方 〉
「(2時間20分という)時間内でこんなに充実した内容が聞けるなんて!
A4のワークで躓いた部分がそのまま課題だと気づきました」【100点】
「人はモノを買うのではなく、未来を買っているという言葉に共感。とてもよかったです。」【100点】
「大体困っていたことの根本原因が分かった」【100点】
「講座名に興味を覚え、何となく参加したが予想を超える深い内容でした。
マイナス5点はわたしの理解度の問題」【95点】
「お金や手法を言い訳にしがちだったのでとても学びがあった」【90点】
「すでに知っている内容も多かったですが、改めて学び直すことで
新たな発見がありました。ありがとうございます。」【80点】
「ターゲット層に加えペルソナを設定することを知った。これを個々に掘り下げた講座が欲しい。第二弾を期待しています。」【75点】
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米山さんの講座は濃度が高く、1回ですべてを理解しきれなかったり、
すべてを実践することはなかなか難しいかもしれません。
まずは、活動仲間と自団体の活動の〈本質〉を考える機会をつくること
「何のために」「誰のために」やっている活動なのか?
を整理することをお薦めいたします。
また米山さんには、事前に寄せられた質問についても回答をいただきました。
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〈 質 問 〉
「一定の興味がある方々だけではなく、広く市民全体に興味をもっていただき、
足を運んでもらうことの難しさを感じている」
「がんばって告知してもいつも同じような顔ぶれになってしまう」
〈 回 答 〉
・切り口を変えてみましょう
・広報ルートを変えてみましょう
〈 質 問 〉
「今のお母さんはSNSをよく使いますが、検索してもらえるコツはありますか?」
〈 回 答 〉
・中身を充実させること
・facebookや直接的なつながりを増やすこと(分母を増やす)
〈 質 問 〉
「後進が育たない」「仲間が増えない」
〈 回 答 〉
・三重県で1万人に調査をした結果、団体に加入した理由第1位は「誘われたから」
・今は”誘う力”が確実に弱まっている
・一生けん命バトンを渡そう
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最後の質問の答えには〈広報〉を考える本質が詰まっていると思います。
広報において声掛け(口コミ)は非常に重要な手法です。
あなたが今、活動をはじめた理由、加入したきっかけは何でしたか?
どんなことに心が動きましたか?
周りにはどんな人がいますか?
講座の最後は、米山さんの次の言葉で締めくくられました。
「Never up, Never in(届かなければ絶対に入らない)」
「蝶を集めたければ、花を育てることから」
広報を考えると、ついつい技術論(チラシのデザインetc)に話がいったり、
自己満足(こんなにいい活動をしているのだから!)という思いを抱いてしまいがちですが
伝える〈 内容 〉〈相手〉〈手法・手段〉を振り返り変える癖と
〈伝えていく〉という小さな努力の積み重ねが結果に繋がるのではないか?と感じました。
・・・
りぶら市民活動センター・岡崎市地域交流センターでは、来年度(2020年度)も広報講座を開催する予定です。ご参加をお待ちしています。
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[ 講師プロフィール ]
キャリアコンサルタント/NPO法人Mブリッジ代表理事
米山哲司(よねやまさとし)氏
1969年三重県生まれ。NHKおよびイベント会社で広報・企画を担当。2006年に人と街をつなぐ中間支援NPO法人 Mブリッジを設立、理事長に就任。三重県内で唯一の「キャリアコンサルタント」(国家資格)と「PRプランナー」(日本 パブリックリレーションズ協会認定)を所有する支援者として、課題解決(まちづくり)と自己実現(ひとづくり)のサポート に力を入れている。専門分野は、広報、アイデア創出、コミュニケーション能力、キャリア開発、企業の社会貢献、プ レゼンテーション、コミュニティビジネス、ワークショップなど多岐に渡るが、共通項は「つながり」がベースとなっている。 単発の講座講師だけでなく、定期的に相談を受ける社外アドバイザーも担っている。現在は、企業や行政の人材育 成研修、モチベーションアップ、交流の場づくりなどの新しい価値創造にも力を入れる。「日本広報学会」「日本創造 学会」に所属。
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